町の特徴に合わせた図書館づくり
梼原町立図書館の見目さんにお話を伺いました。
図書館の立ち上げのタイミングで採用された見目さん。梼原町長の図書館建設への熱意に引き込まれ、都内から移住を決意し、図書館の立ち上げからプロジェクトに携わってきました。
一言に図書館の立ち上げといっても、必要な作業は多岐にわたります。コンセプト作りから、図書館運営の仕組みまで、建築事務所や地域住民の方など、様々なステークホルダーの方と連携しながら進める必要があります。
一筋縄ではいかないことも多かったそうですが、梼原町民に本当に必要とされる、ワクワクする図書館を目指し、置く什器の一つひとつや空間づくりまで様々な工夫をこらしました。
例えば、雲の上の図書館では「テーマ別配架(注)」という通常の図書館ではあまり採用されない配架方法をとっています。
「分類番号でわけるのではなく、自然と気になる本を見つけられる状態を目指して、本との思わぬ出会いを体験してもらえるように考えて配架しています」。
通常の図書館では隣合わないような本が並んでいたり、フロアによってBGMを流す、コンサートやワークショップなどのイベントを定期的に開催するなど、様々な人にとって心地よく、新たな発見があるような空間づくりが行われています。
雲の上の図書館の居心地の良さは、梼原町の木材を使った建築も影響しています。館内は靴を脱いで入館するよう設計されており、足元から木のぬくもりを感じることができます。
(注)一般的に図書館が採用するNDC(日本十進分類法)による分類配架をせず、独自の分類により配架すること。
場面に応じて様々な過ごし方ができる、ぬくもりのあるスペース
雲の上の図書館では、スペースによってさまざまな過ごし方ができるのが特徴。
会話は全館ですることができ、カフェやボルダリング(現在休止中)も併設されています。
ワークスペースとしてのおすすめは、2階のカウンターのある席。それぞれの席にコンセントとデスクライトが備え付けられています。ひとりのスペースが広めにとられていて、資料を開きながらの作業も十分可能です。
オンラインミーティングなどは、併設された「カフェほうきぐも」前のスペースなどを活用いただくのがおすすめ。オリジナルのコーヒーやスイーツを味わいながら、作業ができます。
また、有料の会議室を借りることもできるので、大人数での打ち合わせなどにも便利(要予約)。プロジェクターやマイクも備え付けられています。
当日でも空きがあればカウンターで貸出手続きが可能な場合もありますが、ご利用の際は事前に問い合わせを。
町の歴史や風土を楽しみながら過ごす
坂本龍馬脱藩の道としても有名な梼原町。図書館の周りには、和洋折衷建築を取り入れた「ゆすはら座」や、趣のある街並みが広がっており街歩きも楽しめます。また、世界で最も隈研吾建築が集まっているまちのひとつでもあり、図書館だけでなく「まちの駅『ゆすはら』」や「雲の上のギャラリー」など、様々な施設で隈研吾建築を楽しむことができます。
「どんなところにきっかけがあるかわからないので、本だけでなく、人や建築、音楽など、様々な出会いがあふれ、クリエイティビティが生まれるきっかけになる場所になっていくと嬉しいです」と見目さん。
梼原町内に宿泊されている方であれば、観光客用カードで滞在中
(文・写真 檜山諒、概要外観写真 図書館HP)